戦端を開く前に勝ちを決めるほうが楽

 クーデターで仲間同士で戦う羽目になったミラクル・ヤンは、戦いの前に敵の位置と戦術意図の把握に努めます。

 その苦労を示すのが、敵の所在と戦力を把握した時に小躍りしたエピソードで、相当懸命だったのでしょう。

 戦力が同じ一個艦隊で指揮官も有能なら、正面から戦って勝っても損害は多大でしょう。これは相手も考えたようで、ルグランジュ提督は正面攻撃ではなく戦力を二分、時間差または二方向からの挟撃を計画しました。

 ルグランジュ提督の意図を索敵から知ったヤンは同じように、ヤンの本隊と副艦隊司令のフィッシャー率いる分艦隊でそれぞれ敵を奇襲します。この時、ヤンの本隊とルグランジュの主力は戦力差があり、更にヤンは側面から敵艦隊を分断して、常に優位な戦力で撃破していきます。

 

想定戦力

本隊  第13艦隊1万:第11艦隊7千

別動隊 第13艦隊3千:第11艦隊4千 → 合流後 第13艦隊1万3千:第11艦隊4千

 

 常に敵を上回る戦力で戦う、そのために事前準備を怠らない人ヤン・ウェンリー。真面目ですね。

 で、ふと思うのですよ。ヤン艦隊の索敵はムライ参謀長が計画・指揮しているのかと。ヴァーミリオン会戦の前段とかもムライが索敵の指揮を執っていたし。そうするとヤン艦隊が奇襲を受けない、敵の把握が早いのはムライの緻密な手腕があったのかと思うと彼もまたヤンの不敗神話を支えていたのかもしれません。

 

 一方でヤンよりももっとまじめなラインハルトは、帝国宰相と帝国軍最高司令官を兼務しながらラグナロック作戦の立案・計画を進めたとすると物凄い仕事量ですね。おかげで情報秘匿も徹底されてラグナロックの第一段階であるフェザーン占領は成功します。

 フェザーンへの奇襲は極秘作戦のため、ロイエンタールやミッターマイヤーら軍の幹部に話す前は、ラインハルトはオーベルシュタインぐらいにしか話していないはず。するとオーベルシュタインがせっせと作戦骨子の資料を作っていたのでしょうか。まあ総参謀長ですし。

 

 ムライとオーベルシュタイン。もし会話する機会があれば、両方とも上司のちょっとアレな所に苦労していた二人なので、互いに興味を持ち、会話は弾まないものの苦笑しあうぐらいはしたかもしれません。

門閥貴族は凄かった。

 皇帝崩御からリヒテンラーデ=ローエングラム体制の構築と貴族勢力の反発からの帝国内乱は在庫一掃したいラインハルトにとって理想的な流れでしたが、では確実に勝てるかというと当然そうではない。

 ラインハルトは自信満々でしたが。

 総兵力2,560万人で艦艇15万隻って大兵力ですよ。ラインハルトは宇宙艦隊司令長官の座を手に入れ、18個艦隊を配下に置くものの、何割かは貴族側についたので兵力は拮抗しているはずです。おまけに各要塞は貴族側の支配下になり、戦いの長期化が避けられない様相でした。

 ラインハルトは帝都を空にするぐらい余裕で出撃しましたが。

 参加した貴族が3,470名となれば当然、支配領域も広大で軍資金も莫大なものになり、年単位で軍事行動が可能だと想像できます。反対に帝国政府側は税収が減るので長期化すれば増税などを行わなければならなくなり、帝国民の反感さらには反発さえ予想されました。

 ラインハルトは早々に勝利する前提なので財政は問題にしませんでしたが。

 貴族達は軍事専門家を複数人味方につけ、特にメルカッツはブラウンシュヴァイク公爵自ら勧誘するほど名将として知られ、ラインハルト陣営が最も警戒するぐらいの有能な提督。戦略も戦術も水準が高く、大兵力も複数戦力も統括できるうえに、前線指揮能力も高いという面白味さえあればもっと早く上級大将に、そして元帥もありえたぐらいの人物が軍の最高司令官になりました。

 ラインハルトはどうせ自由に指揮できないと高を括ってましたが。

 こうしてみるとラインハルトの勝利の要因って、門閥貴族のアレさぐらいしかないですね。対等な兵力、豊富な軍資金、複数の拠点、有能な司令官。これが揃って勝てないのならもう滅ぶしかないですからね。

 ラインハルトはそれを見越して戦略立案するという、天才以外許されない行いをしましたが。

 Q リップシュタット戦役においてリッテンハイム=ローエングラム連合が勝利した理由を述べよ。

 A あいつらアホだったから。

 うーん、士官学校の試験ならこんな回答したら留年ですよね。あ、ローエングラム王朝なら教師は苦笑いしながらも、部分点くれるかもしれません。

 

 理由が無い勝利はあっても、理由が無い敗北は無い。そんな格言が身に染みる門閥貴族の終焉を描いたのがリップシュタット戦役です。なおメルカッツ提督がその確定した未来を憂いながらも、ただ一人責務を果たそうとする姿が印象的でした。

義眼の男は二度勝負した。

 いつも冷静、クールなオーベルシュタインは人生の危機を二度、勝負にでてますね。

 一度目はご存知のイゼルローン要塞失陥の詰め腹切らされそうなところをラインハルトに頼って、生き残りました。

 この時、平然とルドルフと銀河帝国を批判して滅ぼしたい発言します。まあ、死刑寸前なので、ここでラインハルトが受け入れなくてもアウトですから、賭けるには正しいですよね。それにただ助けて欲しいじゃなくて、俺はお前の部下になってお前の覇業を助けるぞ、ですから売り込みもばっちりです。

 でもラインハルトがその気なのかは最後まで確証が得られなかったと思うので、失敗すればとんだピエロ、実際にキルヒアイスを呼んだ時の落胆は、「二人で勝手に頑張れはば。どうせ行き詰まるさ。」(要約)というセリフにも現れています。

結局は賭けに勝って自分の命と元帥府の参謀の地位を手に入れるという結末。

 

 二度目はキルヒアイスの死後、アンネローゼに連絡とった時。これオーベルシュタインは全部話してますよね。でないと、アンネローゼが明確にラインハルトに非があったと知る由もない。例えビデオレターで最近の空気をキルヒアイスから聞いていてもですよ。

 で、絶対言ってますよ。「当日ブラスターがあればこのような事はなく、ブラスターを取り上げるように私が進言しました。」って。ついでにその理由も言ったかもしれません。アンネローゼは愕然とします。弟が増長してキルヒアイスを軽んじようとした。それなのに彼は身を挺して弟を庇い死んだ。自分と弟が赤毛の友人を殺した。それがあの二人の姉弟の長い別離に繋がったと思います。

 当然、その場で言わなくてもいいことですが、もし後で知られアンネローゼがオーベルシュタインを非難したら、姉に対する態度からラインハルトがオーベルシュタインを庇うわけもなく失脚。悪くしたら責任をとらされる可能性もある。

 逆にアンネローゼに責められたラインハルトがオーベルシュタインに責任転嫁して、彼女が強い処罰を求めれば、ラインハルトは断れない。

 権力者の私情に絡む話であれば、聡明なオーベルシュタインは説得や弁明できるように自ら切り出したと思います。本来依頼したいラインハルトを立ち直らせる役を務めてもらうためにも。

 色々計算した上でオーベルシュタインはアンネローゼへの連絡に臨んだと思います。まあそんな計算が無駄になるぐらい、彼女は静かに弟を説得する役を引き受け、弟は弟で自分を攻めずにいたので、オーベルシュタインは何か思うところあったのでしょう。

 オーベルシュタインのアンネローゼへは、最高権力者の親族という、謀臣として何か手をうたなければならない相手に何もしない態度から、彼なりの敬意を表していたのではないでしょうか。

辞めたい男は辞めれない。

 常に辞表を胸に秘めている男ヤン・ウェンリー。「いつでも辞める用意がある。」は恰好いいかもしれませんが、年金暮らしに心躍らせるとなるとこれもどうかと。給料分は働いて、あとは年金はもらうのみという小市民的な発想なのに、人類の半分の勢力を支えちゃうという空想上とはいえ後にも先にもいない稀有な人です。

 まあ亜流はいますけど。

 で、第13艦隊がイゼルローン要塞駐留艦隊に再編され、艦隊司令官の名前を当てた通称「ヤン艦隊」が公式化されるというのは武人栄誉で、公式化だと公式文書でも使用可になるので、同盟では破格の扱いですね。本人は望んでは無いし、喜んでもいませんが。

 結局、敵も味方も皆「ヤン艦隊」と呼び、大層な渾名を付けられ、祭り上げられた本人が憮然とするという、まさしく矛盾の人ですね。

 やる気も無いのに勝つとか、勝利の価値を信じてないのに勝つとか、なんなら戦闘中も戦う意味を疑問視しているのに勝つとか、負けた側が知ったら集団訴訟を起こしたくなる人物です。

 まあ信奉者から見ても偉そうに見えない、部下のほうが偉く見える、目立たないけど居ないとなると判るという散々な評判で、戦争以外で偉くなるのが無理な男なので。

 

 こう見ると陰キャのヤンと陽キャのラインハルトという、スクールカーストの下と上の関係でありながら、一つだけ得意なヤンと全てにおいて秀でたラインハルトが学校トップを巡って争うような構図を思い浮かべたり。

  ラインハルトは生徒会長とサッカー部キャプテンと弁論部の部長を兼任して悠々とこなし、ヤンは文学部でひたすら本を読んでいる本来は接点の無い二人がある事を切っ掛けに対立する。

 本当はアンチラインハルトの学生がヤンを祭り上げて一大勢力を作り出しただけで本人は無関心、その横でシェーンコップやアッテンボローあたりが喜々として勢力拡大に奔走し、 キャゼルヌとムライが困った後輩や同期を見捨てておけずに協力するという図式でしょうか。

 

 無敗で無精で矛盾の人ヤン・ウェンリー。元祖ヤレヤレ系主人公として貴重な存在です。

アムリッツァは損斬りできないと大損して元も子も無くなる話

 奇襲やら弱体化で叩かれた同盟軍遠征部隊の反撃はアムリッツァで行われましたが、そもそも弱っているならイゼルローンまで逃げかえればいいものを、「一矢報いたい」という願望で、有り金全部無くしてしまった戦いですね。

 前哨戦で8個艦隊が3個艦隊と艦隊だったものになり、10万隻が半減した時点で何故撤退できなかったかは、敵が焦土作戦を実施した時点で撤退できなかったに遡り、更には出兵した時点までたどり着きます。つまり目的が明確じゃなかったんですよね。

 帝都侵攻が目的なら侵攻ルートと補給線だけ考えて敵のいない星系なんか無視すればいい。帝国領を侵食し領土を増やす(帝国民を開放する)なら設定星系を同盟領として制圧、軍事基地化して奪いに来る敵を迎え撃つ長期戦を覚悟すべし。帝国軍の殲滅なら艦隊を集中運用、一部遊撃で敵の軍事拠点を攻略して敵主力を誘き寄せる案となります。どの案でも(成功か失敗かは別にして)各艦隊が占領地政策に忙殺と浪費させられた後に、アムリッツァで止めを刺されるなんて起きなかったと思います。

 

 そしてアムリッツァ、緒戦でヤンの第13艦隊はミッターマイヤー艦隊を相手にします。ここでヤンは疾風に先制攻撃することで機動力の高いミッターマイヤー艦隊を抑え込みました。原作には第5艦隊の描写はありませんが同盟軍右翼なら帝国軍左翼のロイエンタール艦隊と戦うという状況だと想像。中央は第8艦隊とメックリンガーやケンプにビッテンフェルトがいますが、ミッターマイヤー艦隊の後退でビッテンフェルトが突出、第13艦隊に防がれたらそのまま第8艦隊に矛先を向け、中央と左翼の分担に成功するという無茶をやらかします。もしこの時、ビッテンフェルトが十分な戦力なら第13艦隊も危ないでしょうが、第10艦隊との戦いで1割以上の損失と連戦で攻撃力が下がっていたのが幸いしたのでしょう。最も側面取られた第8艦隊は終わりましたが。

 で、ここで損害気にせずビッテンフェルト艦隊が第13艦隊にまた挑みますが、ヤンは神がかり的な戦術眼で黒色槍騎兵艦隊の攻撃方法の転換を見抜き、撃退に成功します。

 この時点で同盟軍中央の主力第8艦隊は大損害、第5艦隊は敵左翼の金銀妖瞳との対戦で忙しいものの戦線を維持するという奇跡的状況でしたが、後背から来た赤毛の登場で終焉を迎えます。

 巨大な恒星アムリッツァのサイズは不明ですが、赤色巨星で太陽の10倍から100倍あるとなると迂回して近づくのも最低数時間かかります。更に機雷原を敷設して時間を稼ぐ同盟軍首脳部の算段も、新兵器の運用でご破算に。

 正面から10万隻でもよかったところを、一時的に投入兵力を減らしても迂回させて後背を押さえるとは、元帥閣下は完勝=同盟軍壊滅を狙ったのでしょう。それは門閥貴族との戦いに備えてであり、本当に野心家ですね。

 

 まあここもヤンに完勝を阻まれるのはお約束として、第13艦隊の強さは際立ってます。これもフィッシャー提督の艦隊運動のお陰ですね。ヤンから敵の攻撃を受けながら陣形を変更する命令を複数の艦隊の敗残兵と新兵の寄せ集めでこなすとか、名人芸といわれて当然です。ヤンが考えフィッシャーが実行する奇抜な艦隊運動で、名だたる帝国軍提督を撃破していくのが物語の筋の一つになります。特に後の常勝と不敗の直接対決では神業を披露して戦局を決定づけます。

 

 そんな第13艦隊も帝国軍10万隻の追撃戦で最終損失3割の撤退となりますが、7割帰還は奇跡です。この時の同盟に戻れた戦闘艦艇は単純計算で3割程度の大損害でしたから。実際に第13艦隊を中心としてイゼルローン要塞駐留艦隊を編成したら、もう他の艦隊再編することもできなくなるほどの状況で本当に大損でした。

 

 それにしてもこの結果で、国防委員長から最高評議会議長にのぼりつめたトリューニヒトは唯一の勝ち組でしたね。ここから彼の躍進が始まると思うと、権力闘争の情け容赦なさを感じてしまいますね。

補給は大事

 なので、金髪は赤毛に全面的な信頼を寄せて同盟軍帝国領侵攻時に補給艦隊の殲滅を任せるというのが、帝国の反抗作戦の緒戦。

 あ、緒戦も大事ですね。

 敵の艦隊が広範囲に展開されいる隙をぬって後方へ進出するとか、広大な宙域で補給艦隊を補足するのは、帝国側がその地域の航路に詳しくかつ、最適なルートも予想できるので不可能ではないと思います。

 でも敵の後背を移動中に発見されるとか、補給艦隊の殲滅後に撤退する艦隊に捕捉され、数倍の戦力に囲まれる可能性もある危険な任務なので、普通は遠慮したいです。なのに赤毛は意味を理解して作戦を遂行する立派な腹心っぷり。

 

 反対に同盟の補給艦隊護衛部隊指揮官は、勝手に同盟の制宙圏と思い込み呑気に航行して壊滅しちゃいます。片や存在を重視して万の艦隊を送り込む帝国側と、自領をお散歩気分で護衛した同盟軍とでは兵力以前に差があり過ぎました。

 帝国軍3万隻に対して、同盟の護衛は26隻。これが100隻になっても結果は同じかもしれません。でも偵察ぐらい出すとか、分散して奇襲時に備えるなど指揮官に考えがあれば、イゼルローンの司令部に敵襲の報告が入り、撤退の指示もありえたかもしれない。特に奇襲を受けて一方的に損害を出した艦隊が複数いたので今後の展開もかなり違ったでしょうに。

 帰り支度を先に済ませ兵力を温存できた第5や第13や、自軍より兵数の多い黒色槍騎兵艦隊という悪夢と戦いながら4割が離脱できた第10艦隊などが、その証拠でしょう。

 やっぱり、戦争は真面目にやらなきゃいけないです。

 

 この後にだいぶたってから、帝国と同盟が立場を入れ替えて同じ事態になります。補給艦隊の指揮官が死ぬのも同じですね。同盟側に十分な戦力が無く、補給を潰した後に即反抗作戦とならなかったのが、悲しい所ですね。

要塞砲の射程距離とその性能

 イゼルローン要塞と言えば「雷神の鎚」。文章だけでも絶大な力を感じますが、画像や映像にすると圧倒的な暴力として映ります。でも艦隊戦の砲戦距離は数光秒から十数光秒なのに、トゥールハンマーは有効射程距離6.4光秒未満です。同盟軍が名付けたこの境界「D線(デッドライン)」は、艦隊編成で星系内を光速の1%(秒速3,000㎞)で移動できる艦隊が回避できるラインだと考えます。これより遠ければ発射後でも艦艇は回避可能、なので同盟が第6次イゼルローン攻略で実施した「D線上のワルツ」は、艦隊の回避能力のギリギリで敵を翻弄・誘引する作戦です。

 まあ撃つときに発光しながら充填するので、発射タイミングも判りやすいから散らばれば回避できるよねって話ですが、艦隊行動では数万隻もいる艦艇を柔軟に動かすことは難しく、これ以上近づくと喰らってしまう。なお要塞は大き過ぎる上に回避行動はとれないため、攻撃側は砲撃し放題です。しかし防御力も桁違いなので戦艦の主砲を束にしても敵わないため一方的に撃たれるという話。

 特大の核融合炉の大出力を前提として有効射程距離内の敵はトゥールハンマーで薙ぎ払う設計思想は、防御においては完璧に近いと思われます。

 なお建設は大変で、予算オーバーで責任者が自殺しましたが。

 

 他にも半永久的な防衛を目的としているため要塞砲以外の兵器もてんこ盛りです。二万隻の艦艇を収容可能で同時に四百隻を整備できて、兵器も製造できるという、当時これが移動できたら同盟終わってた代物。もしかして同盟が何度も攻略を目指したのも、政治的な理由を別にして、帝国に占領された同盟領にこんなのが作られたら本格的に終わると思ったからでしょうか。実際、帝国領には他にも要塞があり、帝国に要塞建設の豊富なノウハウがあるのは間違いないので。

 

 実際に移動式の要塞はガイエスブルクで実現しました。もし移動式要塞が同盟領を目指したとしたら。おそらく同盟艦隊総動員で護衛の艦隊を抑え込み、多数の隕石ロケットで要塞への物理突撃の敢行か、強襲揚陸艦で歩兵を送り込み内部から破壊を目指したと思います。ミサイル艦による飽和攻撃や無人艦による突入、陸戦隊の投入に効果があった点からも有効な攻撃でしょう。

 つまり「要塞占領ではなく破壊なら簡単」というヤンやラインハルトの発想に辿り着くので、移動式要塞は絶対的な存在ではなく、常識的に拠点として利用するところに落ち着くのでしょう。この二人はそう言いつつ、簡単に占領したり無力化したりする困ったちゃんですが。

 

 まあアルテミスの首飾り対イゼルローン要塞という構図も大艦巨砲主義的ロマンからすれば中々面白いかもしれません。作品中のハードウェアに頼る思考を嫌悪したり軽蔑したりする人たちからは鼻で笑われるでしょうが。十二基の大型衛星で、一個艦隊程度なら撃退できる火力と防御力があれば、イゼルローン要塞との打ち合いでも要塞装甲に損害を与えることができるかもしれません。そうすると要塞主砲を十二回撃つのが先か、月の女神の洗礼に耐えきれなくなるのが先か、中々のチキンゲームが展開されると思います。

 ただし別の作品となっていたかもしれませんが。

 やはり銀英伝的にはイゼルローンは回廊に鎮座して射程内に踏み込む敵をなぎ倒すのが丁度良いのかもしれません。