義眼の男は二度勝負した。

 いつも冷静、クールなオーベルシュタインは人生の危機を二度、勝負にでてますね。

 一度目はご存知のイゼルローン要塞失陥の詰め腹切らされそうなところをラインハルトに頼って、生き残りました。

 この時、平然とルドルフと銀河帝国を批判して滅ぼしたい発言します。まあ、死刑寸前なので、ここでラインハルトが受け入れなくてもアウトですから、賭けるには正しいですよね。それにただ助けて欲しいじゃなくて、俺はお前の部下になってお前の覇業を助けるぞ、ですから売り込みもばっちりです。

 でもラインハルトがその気なのかは最後まで確証が得られなかったと思うので、失敗すればとんだピエロ、実際にキルヒアイスを呼んだ時の落胆は、「二人で勝手に頑張れはば。どうせ行き詰まるさ。」(要約)というセリフにも現れています。

結局は賭けに勝って自分の命と元帥府の参謀の地位を手に入れるという結末。

 

 二度目はキルヒアイスの死後、アンネローゼに連絡とった時。これオーベルシュタインは全部話してますよね。でないと、アンネローゼが明確にラインハルトに非があったと知る由もない。例えビデオレターで最近の空気をキルヒアイスから聞いていてもですよ。

 で、絶対言ってますよ。「当日ブラスターがあればこのような事はなく、ブラスターを取り上げるように私が進言しました。」って。ついでにその理由も言ったかもしれません。アンネローゼは愕然とします。弟が増長してキルヒアイスを軽んじようとした。それなのに彼は身を挺して弟を庇い死んだ。自分と弟が赤毛の友人を殺した。それがあの二人の姉弟の長い別離に繋がったと思います。

 当然、その場で言わなくてもいいことですが、もし後で知られアンネローゼがオーベルシュタインを非難したら、姉に対する態度からラインハルトがオーベルシュタインを庇うわけもなく失脚。悪くしたら責任をとらされる可能性もある。

 逆にアンネローゼに責められたラインハルトがオーベルシュタインに責任転嫁して、彼女が強い処罰を求めれば、ラインハルトは断れない。

 権力者の私情に絡む話であれば、聡明なオーベルシュタインは説得や弁明できるように自ら切り出したと思います。本来依頼したいラインハルトを立ち直らせる役を務めてもらうためにも。

 色々計算した上でオーベルシュタインはアンネローゼへの連絡に臨んだと思います。まあそんな計算が無駄になるぐらい、彼女は静かに弟を説得する役を引き受け、弟は弟で自分を攻めずにいたので、オーベルシュタインは何か思うところあったのでしょう。

 オーベルシュタインのアンネローゼへは、最高権力者の親族という、謀臣として何か手をうたなければならない相手に何もしない態度から、彼なりの敬意を表していたのではないでしょうか。