アドリアン・ルビンスキーはフェザーン自治領主という地位を利用して政略と戦略を楽しむ策謀家ですが、大き過ぎる野心とたぐいまれなる才能により銀河をかき混ぜました。
自治領主としてフェザーンを統治し、帝国の高等弁務官や同盟の駐在弁務官との駆け引きをこなし、曲者ぞろいの部下や尊大な地球教団を統御してました。
ただそれ故に銀河を手中におさめんとするライハルトからは明確な敵として滅ぼす対象とされました。帝国貴族のように憎悪の対象ではなく、有能だが他者に従うタイプではないとみなされたからです。
ラグナロック作戦ではボルテックの裏切りにより、フェザーン占領をゆるします。もっとも失点はそれだけで、捕まることなく地下に潜伏、あのオーベルシュタインからの追及もかわし続けます。
その後、地下から策謀を重ね何度かラインハルトを追い詰めますがその牙は届かず、愛人のドミニク曰く「戦ったのか、足をすくおうとしただけなのか。」判断つかぬまま脳腫瘍で死亡します。
しかし終わりが今一つとはいえ、同時代の者からみれば危険度トップクラスの策略家です。
実際にロイエンタールの反乱は若い帝国の根幹を揺るがす大事件です。単なる反乱だけでなく、ロイエンタールという新帝国の大功臣であり当代一の提督で、長期化すれば間違いなく帝国に大きな傷を残していました。
またフェザーンの航路局のデータは最重要データであり、これの喪失は巨大帝国の経済や軍事活動を停滞させ、各所で混乱や争乱が起こる可能性は否めません。特に辺境の物流が滞れば反帝国勢力の復活にもつながります。
この危機を防いだのがミッターマイヤーとオーベルシュタイン。相手が悪かった、むしろ手札が少ない中で、この二人とラインハルト相手に国家規模の危機を作れたのは優秀といっていいでしょう。
ルビンスキーの死は物語の終盤で、ラインハルトより少しだけ早くのタイミングでした。もしルビンスキーがラインハルトより長生きする、もしくはオーベルシュタインの退場後も活動できたのなら。そんな風に思うほど個性的で魅力的な悪役でした。