銀英伝の技術的前提条件を整理してみます。

 銀英伝の舞台は遠い未来であり、今よりも進んだ科学技術がある前提です。ただ戦乱の世の常か、それらの技術は軍事に最も投入され、その粋を集めたのが宇宙戦艦だったりします。

 では具体的に軍事に利用されているものは何かというと、まずはレーダー透過装置です。電波を発し反射により物質の存在を察知するレーダーを無効化する装置ですね。おかげで宇宙空間での索敵能力は大幅に低くなり、目視(正確には他の方法で存在の算出は可能)レベルまで落ちてしまいます。これにより射程圏内に突然敵が現れたり、逆に敵に知られる事なく照準に敵の艦影を入れることができます。また当然味方の位置も簡単に知ることができず連携が重要となります。

 次に重力制御と慣性制御。宇宙空間でも宇宙船内では地上と同じように、地に足をつけて過ごせる魔法のシステムが重力制御です。船内だけでなく船にかかる重力も制御すれば惑星地表面で浮かぶことも造作ありません。また慣性制御によりゼロからの超加速と、超高速からの急停止をいとも簡単に行えます。そうでなければとても宇宙空間を自在に機動なんてできませんし、恒星系内で光速の1%(秒速3,000㎞)で移動するのも無理です。

 また有効射程距離が十数光秒という高火力火器であるビーム兵器とそれを防ぐエネルギー中和磁場=シールドの存在により、陣形を組んでの火力応酬が戦場の基本戦術となってます。両者を矛と盾とすると矛の方が優位で、艦の前面なら耐えるシールドも艦の側面積をカバーすることが出来ずに突破されます。

 何より忘れてはならないのが40cの空間跳躍が可能なワープ装置です。これにより人類は銀河へ広がり生存圏を拡大、最盛期は3,000億の人口を数えるほどになりましたから。

 あと核融合炉もそうですね。上に書かれたシステムに必要なエネルギーを捻出するには高効率なエネルギー源が必要不可欠です。

 そんなこんなを集めてできた宇宙戦艦。作中では具体的な費用の記載はなく何ディナールか何帝国マルクかは判りませんが、一隻製造するのに大変なコストがかかってそうです。

 あと意外と地味に凄いのが1万隻を超える艦船を管理・運用する仕組みです。部隊編成は細かいところまで不明ですが、管理システムには艦隊の全艦船全要員の情報が収められているのでしょうから、艦隊旗艦級の戦艦は情報システム関連も桁違いのコストがかかっていそうです。なおミュラーが旗艦を四度も替えて戦い続けた逸話がありますが、同じ戦艦クラスであっても司令部能力(システムの処理能力)に差があったとすれば、ヤンの攻勢を防ぎきれなかった原因の一つだったかもしれません。

 他にも惑星間どころか恒星間の通信が可能な超光速通信やイゼルローン要塞やガイエスブルク要塞のような超巨大建造物を造る技術に、出力が想像もつかない巨大な核融合炉、ガンを克服して手術一回で簡単に接続できる義手があるなど未来過ぎる世界です。

 まあこんなに科学技術が発展しても帝国と同盟に分かれて戦争が繰り返されているのと、帝国の政策の結果で遺伝子技術やクローン技術が発展せず封印すらされている感があるので、ルドルフの影響もしくは呪いが技術面でもあるのが銀英伝の特徴ですね。