亜麻色の孺子ことユリアン・ミンツはトラバース法によりヤンの養子となり、その後は軍人の道に進み、ヤンが独立した後も付き従い、彼の死後は後継者として革命軍を率いて戦います。十分に歴史上の人物として成り立つ功績を立てる彼は、物語の前半では天才型の若者として描かれていました。
最初の功績は初出撃で敵戦闘艇を3機撃墜と巡航艦1隻撃沈、次には第八次イゼルローン攻防戦で敵の戦術を看破、フェザーン駐在武官への大抜擢から敵の侵攻に際して上官を保護しつつ無事に脱出、途中で敵艦を捕獲、ヴァーミリオン会戦では敵の戦術を見抜いて状況の打開の助けとなるなど輝かしい武勲をたてました。
同盟離脱後も第十次イゼルローン攻防戦で突入部隊の一員となり、イゼルローン奪還の役割を担います。
革命軍司令官に就任後も2個艦隊を相手に勝利を得て、皇帝ラインハルトを相手とするシヴァ星域会戦では艦隊を指揮しつつ、敵旗艦突入による白兵戦の末に皇帝から直接停戦を引き出し講和へと導きました。
このように個人戦歴では十分に派手な内容です。何よりこれが全部10代後半の話なのですから驚きです。物語は彼が20歳になる前に終わりますので、それ以降は判りません。物語からは軍人を辞めて歴史研究家となり、主にヤン・ウェンリーに関する調査や研究したと読み取れます。
なお物語の後半、自らが革命軍を率いる立場となると生真面目で堅実的なタイプとなりますが、これはヤンの重責を本当の意味で知り本来の性格が表に現れたとなっています。
実際にヤンが担っていた責務は、星系国家と数百億の国民の行く末であり、人類史を左右するレベルでした。ユリアンが担ったのは数百分の一の人々と民主主義という制度の僅かな灯です。それでも18歳の肩にはあまりにも重く周囲から『亜麻色の髪で深刻ぶるのが似合うタイプ』と(軽口の類とはいえ)思われるほどでした。
首から下は不要の師父とは違い、準主人公として様々な場面で活躍したユリアン。戦士として参謀として軍事指導者として記録に残る戦歴と功績を持つユリアンは、僅か数年の出来事ですが自由惑星同盟末期の将兵の中でも華麗なる戦歴の持ち主として、語られる存在でしょう。