ボルテックの失策 ‐フェザーン人なら自分の足で歩くべき‐

ボルテックといえば、フェザーンの要人で黒狐ルビンスキーの右腕だった男です。個性は強くありませんが、官僚として能力は十分優秀(そうでなければ自治領主補佐官、帝国駐在弁務官など務まりません)でした。

そのボルテックの躓きは皇帝誘拐計画の対帝国交渉でラインハルトに手玉にとられた時からです。作中でも指摘された皇帝を誘拐してから交渉に入る、または案だけ提示して帝国からの申し出を聞いてから受け入れ先の同盟との仲介を行えば、ラインハルトも譲歩したでしょう。それが中途半端なタイミングで交渉に及んだため、見透かされてしまいました。

ラインハルトをへぼ役者扱いした報いで、ボルテックは恫喝までされます。

この後、ボルテックはフェザーンを裏切ります。祖国と直接の上司を帝国に売り渡してフェザーン代理総督の地位を得ます。この時の経緯は不明ですがボルテックが自分を売り込んだ可能性が高く、また地球教についても隠したままでやり過ごし、帝国統治下での代理総督の任務も過不足なくこなして、有能ではあることは間違いないです。

しかし最終的にはルビンスキーの計略でラングに暗殺されて退場となります。

もしこの時代でなければ、ラインハルトやルビンスキーで相手でなければ、次期自治領主になることも大過なくフェザーン要人として過ごすこともできたでしょう。

ではラインハルトに手玉に取られたあと、どのような逆転が可能だったのでしょうか。

誘拐は実行したうえでルビンスキーと謀り、同盟軍をフェザーン回廊の同盟側出入口に配置させるまでに至れば、最初に目論んだフェザーンが帝国に貸しを作ることができるのではないでしょうか。最終的には帝国に統一させるため、出入口で善戦する同盟軍をしり目に同盟の一部を焚きつけてクーデターを起こさせるとか。原作通り最高評議長に停戦命令をださせるとか。

少なくとも「タイミングをみて切り捨てられる存在」扱いで過ごした上で暗殺されることはなかったのではないでしょうか。

ラインハルトはルビンスキーを間違いなく政治権力から遠ざけるでしょうから、次席のボルテックがフェザーン統治の高官に抜擢される可能性があり、もしくは反帝国のフェザーン人を糾合して一定の勢力を保つことができたかもしれません。

作中でも後半は存在感をなくしたボルテック。やはりフェザーン人らしく自分の足で歩くことをしなくなったのが、彼の最大の失敗だったのではないでしょうか。