自由惑星同盟の軍需とその他について

 自由惑星同盟は対帝国の戦時体制国家として百年に渡り戦争を続けてきました。そのため経済の一部は軍需によって成り立っています。

 まず同盟軍5,000万の兵力の付随する必需品は膨大な量になります。また艦船数十万隻と同盟内にある70ヶ所の基地の維持にかかる労力や資材、そして全長1㎞にもなる巨大な戦艦を始めとする兵器の製造があります。
 何より5,000万人の人件費は様々な費用として社会に還元されるので、影響は無視できません。

 この軍需に関わる費用の出所は国防予算であり、末期は同盟政府予算の半分を占めました。同盟政府予算がGDPの30%(各惑星の自治及び経済の独自性は強いと判断して)と設定すると、単純にGDPの15%が軍事予算となります。現在の日本の対GDP比1%やアメリカの3.5%と比べると格段に高い数値です。

 つまり自由を愛する同盟は、安全保障だけでなく経済も軍事によって成立しているという事実が浮かび上がります。

 兵器や機器を製造する軍事企業だけでなく、同盟軍に生活必需品や消費財を収める産業・流通企業や軍の物流を代行する運輸業、基地や工場建設に関わる建設業まで帝国との戦争で潤っているあるいは存続できている企業は無数にあると考えられます。帝国との戦争がなければ成り立たない企業もあるのではないでしょうか。

 戦争の特需はあくまで異常値であり、資源や資産をすり潰して生み出している面があるため、戦争が長期に及ぶほど終戦後の反動は強くなります。むろん賠償金が取れたり新たな資産(領土)等が得られる場合があります。しかし帝国との戦争ではそれは望めません。

 もしかしたら同盟政府の中にはそれが判っていたからこそ、戦争継続を望んでいた層がいたのかもしれません。停戦後に起こる人員の削減や需要の低下による経済的影響は、戦時体制しか知らない同盟では未知の領域です。穏健派であり最高評議会に名を連ねる大物政治家ジョアン・レベロやホアン・ルイも、停戦を訴えても軍の解体などは目指していませんでした。

 

 この体制を最も有効的に利用したのがトリューニヒト国防委員長でしょう。国防予算は帝国が存在し侵攻が止まらない限りは減らすわけにはいかない。この現実がある以上、GDPの15%を左右する強い立場は、表と裏の両方で強い権限を持つことになります。
 また国防予算の確保を訴えれば軍と軍事企業からの支持が得られるため、トリューニヒトだけでなく主戦派全般が強い勢力を維持できます。
 本来は自由惑星同盟を存続させるための強力な力を、自分の権力を広げるために使えばどうなるか。トリューニヒトは強い支持基盤と豊富な政治資金によって政治的子分達を多く持つことで、最高評議会委員長まで昇りつめました。

 もっとも彼は美味しいところだけ食べると、帝国と同盟の講和後は簡単に政権を放り出しました。同盟政府の中枢にいた彼は、政府の財政事情や組織状況は十分承知しています。「報復を恐れて安全のため帝国領に逃げた」のは副次要因で、「崩れかけた住まいからの引っ越し」が主要因だとすると、同盟は本当に滅びるしかなかったのかもしれません。