帝国のベテランといえばメルカッツ提督、同盟の宿将といえばビュコック提督ですが、この二人とは違った意味での老将がいます。
一人はラインハルトの前の代の帝国軍宇宙艦隊司令長官グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥、もう一人は同盟軍参謀本部本部長のシドニー・シトレ元帥です。
ミュッケンベルガー元帥はラインハルトが軍に入ったときからその地位にいた高級軍人で、伯爵の地位をもつ貴族でもあります。
軍歴も長く経験も豊富ですが、何よりラインハルトの台頭に対して最初は寵姫の弟、ある程度で将器を認め、最後は大人しく勇退し地位を明け渡しました。その後の帝国の内乱には加わわらず、帝国の武官の本分を全うしての退場でした。
リップシュタット連合に参加せずにいたため、新王朝でもミュッケンベルガー家は存続したでしょうから、家名は守り切ったと考えられます。
ラインハルトは彼を無能扱いしていました。意義も意味も見いだせない戦いを繰り返し、同盟を制圧できなかったのですから。
一方で司令長官としての職責に耐えられる能力はあったはずで、軍務尚書や統帥本部総長らとともに帝国軍三長官として軍を支えていたのです。
シトレ元帥は士官学校出のエリートですが、能力があり視野も広く、軍事力を道具として、戦争を外交の一環として捉えることができる優秀な人物でした。
引責退役後は故郷で農家となり影響力や政治力を行使せずにいました。唯一、同盟でのクーデータ事件で鎮圧に回ったヤンを支持する声明を発表したぐらいです。
もしラグナロック作戦時に本部長として軍に留まっていたのなら、その前に同盟侵攻などなければ、とIFを考えてしまいます。
一方で政府の問題は深刻な状況であったことは変らず、失脚か逆に政界に討ってでるかの選択を迫られたかもしれません。
二人とも自分の役割を終えると完全に引退しまい、ミュッケンベルガー元帥は物語から消え、シトレ元帥も時折顔を見せるものの、主要人物ではありませんでした。
最後まで戦い、戦死したメルカッツ提督やビュコック提督とは違う、「老兵は死なず、消え去るのみ」を体現した二人でした。