陰謀で彩られた銀英伝

 戦争が陽なら陰、表なら裏、メインディッシュならデザートと戦乱の世には欠かせないのが、陰謀・謀略です。

 銀英伝でも艦艇が打ち合う艦隊戦と同じくらい、数々の陰謀・謀略が実行されました。

 リップシュタット戦役では、ラインハルト陣営が軍の全権を掌握、貴族連合側の貴族の逮捕から始まり、離間策としてのオフレッサーの解放、ヴェスターラントの悲劇を利用した情報戦、そしてリヒデンラーデ公をローエングラム公爵暗殺未遂での逮捕。

 なんかほぼラインハルト陣営というかオーベルシュタイン参謀長の手腕で行われていますね。

 同時の同盟クーデターも、実は帝国の謀略で内乱介入への対策でした。

 第八次イゼルローン要塞攻防戦では、帝国の攻撃計画に並行してフェザーンから同盟へヤンの査問会開催の教唆があり、攻撃時に司令官不在の環境を作り出しました。

 そして帝国とフェザーン合作による、銀河帝国皇帝誘拐からの同盟での旧門閥貴族の政権樹立です。これは帝国から同盟への開戦理由を生み出すための謀略でした。

 単に大義名分を得るのに留まらず、帝国民に旧体制へ戻る危機感を抱かせて民衆・兵士からの支持を得てる策でした。

 なおラインハルト側の陰謀はだいたいオーベルシュタインが絡んでますが、実は同盟クーデターはラインハルトとキルヒアイスが仕切り、帝国誘拐はオーベルシュタインは途中から報告を受けて参画しています。あのオーベルシュタインでも全ての陰謀を一人で仕切っているわけではありません。(蜂蜜色の人が「やられてたまるか」と怒ったりしています)その色が濃くなるのは新王朝で軍務尚書の地位を得てからです。

 

 陰謀は艦隊戦よりもコストが安く、人的損失も比べるほど少なく、一方で効果は絶大だったりします。

 費用対効果であれば同盟クーデターは最高でしょう。裏切った元同盟軍人に計画を与えて送り出すだけです。人選と計画は重要ですが、人選については能力あり(リンチは少将で艦隊指揮官までなった)祖国愛が低い(妻は離婚、軍からも忌避)人材を矯正区から無事に探し当てました。計画は秘密保持のため、おそらくラインハルト自身が食後のデザート替わりに立てたのでしょう。最悪どの段階で失敗しても損失は無く、それでいて一定の段階まで到達した時点で目的(同盟を混乱させる)は達成というコストパフォーマンスは最高です。

 同様に皇帝誘拐もそうです。誘拐を見過ごすだけで負債(皇帝の存在)がチャラとなり、誘拐犯を詰るだけで侵攻の大義名分(旧体制の復活を許さない)を得るのです。

 こう考えるとラインハルトは商売人でも十分やっていけそうです。なんせ殺したい相手(皇帝や門閥貴族)にも必要であれば頭を下げることができるのですから。

 

 陰謀といえばオーベルシュタインですが、その主ラインハルトもまた謀略の手腕は負けず劣らずというのがよいですね。