空間跳躍(ワープ)における時空振について

 作中で空間跳躍(ワープ)は、個人所有の船や連絡艇クラスでも可能な技術で、ちょっと飛行機を飛ばすぐらいの技術として描かれています。

 実際は超絶科学技術で、人類が銀河に進出するための必要不可欠の要素です。

 以前に移動距離について記しましたが、ワープ自体は作中で明確な記載としては、アムリッツア会戦で同盟の戦艦が敵前でワープした話と、第8次イゼルローン要塞攻防戦でのガイエスブルク要塞の実験ワープとイゼルローン回廊へのワープぐらいでしょうか。

 

 前者は周囲に艦艇(帝国側)がいるのに、航路設定をせずにワープした話です。航路設定しないと亜空間からでることができず、永遠の漂流者になるそうです。この戦艦の物語はここで終わりですが、接近していた帝国軍の艦艇は時空振に巻き込まれて回避作業を行い、艦列は乱れた結果、味方艦同士で衝突が複数発生します。

 大型とはいえ戦艦一隻の空間跳躍で敵側に影響でる状況は、ワープのエネルギー消費量は格別なのでしょう。ここでのポイントは大質量が近くにあった場合は通常はワープしないです。

 ではこの大質量とはなにかというと、恒星アムリッツアか帝国艦隊かのどちらかです。ここでは帝国艦隊とします。通常の艦隊移動ではワープは一斉に行うため、時空振が発生するタイミングでは僚艦もワープしているため、残された周囲への影響が無ければ問題ありません。周囲への影響を配慮してワープしないのが常識なのでしょう。
 艦隊戦のさなかであれば敵味方を、通常は味方がより近距離なので多くの味方を時空振に巻き込んでしまいます。ワープした戦艦は味方の艦が周囲におらず突出していたのでしょう。そのため集中砲火を恐れて亜空間に逃亡したのでしょうか。

 

 ガイエスブルク要塞のワープでは終了時、亜空間からの出現時にも時空振が発生することが記されています。同盟軍の哨戒グループが空間のひずみを発見した位置は300光秒。戦闘距離から遥かに離れた位置ですが、艦隊は急速離脱中に時空振に巻き込まれました。
 質量が大きいもの(ガイエスブルク要塞は40兆トン)のワープは、発生する時空振も桁違いになるということです。

 

 ではこのワープ時の時空振を攻撃に、さらには時空振を発生させる兵器は開発されなかったのか。おそらく思案や試作はされたかもしれません。しかし、味方を巻き込まない距離で実施するするとなると、その前に迎撃・撃墜される可能性は高いでしょう。
 そもそも質量の大きさが効果に影響するので兵器となると艦艇サイズのミサイルとか現実的ではありません。また戦術レベルでの精緻なワープアウトは難しい理由があるかもしれません。

 あとは艦艇のワープ時はシールドが利用できず、その隙が致命的な損害を発生させる可能性があります。戦闘中のワープは当然として、退却時も十分な距離を置いてのワープが必要になるとも想像できます。

 

 他の宇宙戦争作品では敵前ワープアウト・インの場面が見られますが、こちらの銀河では上記の事情で戦術には組み込めないと考察したしだいです。

ヤン・ウェンリーの評価(帝国編その2)

 ローエングラム王朝の帝国の提督達は酸味の帯びた記憶と共に同盟の魔術師を称賛します。

 ミッターマイヤーは、ヤンとの直接対決であるアムリッツア会戦では自身の得意とする速攻を第13艦隊から受けて後退しました。ヤンの第8次イゼルローン攻防戦で敗残となったミュラーを追うグエン・バン・ヒューらの艦隊を壊滅させた時は、あまりの脆さに同じヤン艦隊かと苦々しい気持ちになったぐらいです。

 ロイエンタールは常に皇帝の意識から離れないヤンの存在に、自身が嫉妬していると感じるほどです。また彼は第9次イゼルローン攻防戦で要塞の占領を成功させましたが、後の第10次イゼルローンでヤンが残した仕掛けによりあっさり再奪還されたと知った時の心境は、単純なものではなかったです。

 ワーレン、ルッツ、シュタインメッツらも一敗地にまみれ、それまでの武勲が無に変えすほどの敗北感を与えられており、ヤンを語る時に苦味を感じるほどです。

 二度の敗北でその記憶を上手く昇華できなかったレンネンカンプは本来の資質に合わない謀略を用いて返り討ちにあい横死することとなりました。そそのかしたのオーベルシュタインはレンネンカンプすら生贄にするつもりだったので、彼がヤンに対して少しでも敬意を持つことができれば迂闊な誘いにのらずにいたのでしょうが。

 反対に敵意から尊敬まで昇華したのがミュラーで、第8次イゼルローン攻防戦での敗北で、ヤンの強さを認め復讐戦を誓いバーミリオンで奮闘した彼だからこそヤンに対して敬意を持つことができました。

 正反対の二人とは別に評価しえたのがメックリンガーです。元々ラインハルトを客観視して評価したいた彼は、ヤンに戦略的思考を逆手にとられて戦術レベルで敗北したことで、ヤンの凄さを正確に把握することができました。だからこそ後のイゼルローン要塞無血通過時も芸術的センスを交えての敬意を持った電文を送れたのだと思います。

 なおヤンに二度敗北しても戦場に立ち、ヤン艦隊と戦い続けた奇跡の人ビュッテンフェルトは、全く戦闘意欲を衰えさせず次こそは倒すの精神で突撃を続けました。彼のヤンに対する評価は作中に書かれませんでしたが、生涯かけて倒すべき相手と定めていたのかもしれません。作中最大の攻撃力を誇る彼と彼の艦隊の目標としたのであればそれは最高の評価だと思います。

銀河英雄伝説の経典(メディア)における差異について その2

銀河英雄伝説は原作小説を原点としてアニメ2作品、漫画2作品、舞台2作品と幅広く展開されています。

各作品で一部の脚本やキャラクターが微妙に変更されているのも特徴です。

 

旧アニメでは時系列の変更がありました。クロプシュトック事件やベーネミュンデ侯爵夫人の退場は、原作では外伝でアスターテ会戦の前ですが、本伝の中に組み込まれました。
またヴェスターラントの虐殺では、判断の主体が変更されたりもしました。また戦闘では単座式戦闘艇が1機で大型艦を撃沈するなどの演出もされました。

 

道原版漫画では、やはりルビンスキーを女性にしたルビンスカヤでしょうか。連載が完結せずに終了したため、ケッセルリンクやドミニクをどのように登場させるのか判らぬままが残念です。ケッセルリンクは息子のままで、ドミニクは同性の愛人枠ということも考えられましたが。
あとアルテミスの首飾りが帝国の大貴族とはいえ購入可能だったので、お値段が気になるところです。

 

新アニメは新たな脚本として大幅に変更しているため、あれやこれやと違いがあります。大きくはヤンが完全にイケメンになったことでしょう。「人によっては見えなくもない」から明確なイケメンへとアップデートされています。
他にもキャゼルヌが眼鏡となり未来でも視力問題が改善されていないのか、伊達眼鏡なのかは不明で、謎が増えました。

 

藤竜版漫画では脚本の変更もありますが、演出でキャラの濃さが激しくなった印象です。フレデリカはヤンオタクで、ビュッテンフェルトやフィッシャーはワイルドになり、ミッターマイヤーとロイエンタールもディテールが増しました。

でもポプランは変らないと感じるのは何故でしょう。イメージが「イゼルローンの諸星あたる(でもモテる)」であったため、漫画的描写も余り違和感がなかったせいでしょうか。

 

そしてイゼルローン要塞。旧アニメでは外部装甲が原作の鏡面処理した四重のセラミック装甲から液体金属へと変更となり、戦闘でも様々なアレンジがされました。
また要塞砲の雷神の槌(トール・ハンマー)は、原作の主砲郡の一斉射撃から液体金属表面にエネルギーを集約して放つ兵器へと変わりました。

流体金属については新アニメでも受け継がれ、要塞VS要塞でも戦術の要素として組み込まれていました。

 

そんなわけで歴史小説や大河ドラマ如く、アレンジを加えられて発表されるのも銀英伝が息の長いコンテンツとなった理由かもしれません。

お祭りヤン・ファミリーの構成員(問題児達)

ヤン・ファミリーは、朱に交われば赤くなるを地でいく組織で、司令官の存在を起点として同盟軍の中では異色の司令部を構成していました。
特に色を濃くしているのが問題児達、ワルター・フォン・シェーンコップ、オリビエ・ポプラン、ダスティン・アッテンボローらです。

彼らは各々が組織の中で交わらず孤高の存在だと自負していますが、間違いなく朱の構成要素で責任の多くを占めています。

 

第十三代薔薇の騎士連隊隊長でイゼルローン要塞防御司令官のワルター・フォン・シェーンコップは、性格は不遜、行動は不惑、発言は不穏と危険人物の代表です。

実際にヤンにクーデターをそそのかしたり、政府と敵対した時には平然と武器を使用したりと実力行使に迷いが無いタイプです。

その自信を支えるのが「地に足をついている限り彼ほど頼りになる男はいない」と言われるほどの白兵戦の戦闘及び指揮能力です。同数兵力なら敵なしの薔薇の騎士団を率いて作中でも暴れ続けました。

最後まで自分を貫き、死ぬ時すら自分の趣味に合う死に方を選ぶほどです。

 

要塞防空指揮官で第一空戦隊隊長のオリビエ・ポプランは、お祭り好きの享楽主義者です。戦争をスポーツの一種と捉え、作中では常に余裕の態度で空戦をこなす撃墜王でした。
自分の配下の中隊名に「ウイスキー」や「コニャック」など酒の名前を付ける(一説には女性の下着の名前を付けようとした)ぐらいふざけた性格です。同時に空戦において新たな戦技の創始者であり生涯撃墜数で五指に入る天才でもあります。

生き残る秘訣を問われて「世の中を甘く見ること」と答える男は、常に死地に身を置き、ヤンと後継者のユリアンを支え続けました。

 

ヤン艦隊の分艦隊司令官ダスティン・アッテンボローは常に野党気質で、本流とは相いれない所がありながら才能豊かで、提督にまでなった男です。

ただし問題児ぶりは士官学校で既に発揮されており、門限破りや禁止図書を組織だって学生内で回覧させるなど、反体制的行動を主体的に実行していました。

ヤンと共に同盟から離脱した後は、「革命ごっこ」に熱中する様をヤンに皮肉られるほどです。

それでも艦隊指揮の技量は本物で、ヤンの奇跡の種として様々な戦いに参加、最後まで生き残っています。

 

これらを重用し続けたヤンの器量(もしくは責任)の範囲ではありますが、彼のもとでノビノビとやりたい放題(おそらく彼らは「自分は他の連中と違って常に自重していた」と主張するはず)充実した人生のひと時を過ごしたのは間違いなさそうです。

黒狐の敗北、フェザーン失陥は本当に敗北だったのか

 銀河帝国末期の自治フェザーン第5代自治領主を務めたアドリアンルビンスキー。政略と謀略のプロで黒狐とあだ名される男は、新帝国においての重要政治犯として常に追われながら、様々な謀略で帝国政府に対抗しました。

 帝国の公敵とされる実力は、新領土総督のロイエンタールを謀反に追い込む程でした。一方で武力は皆無のため、手段が陰謀のみでそれも他者を利用するしか方策がないのが弱点でもありました。

 その彼の大きな失点が帝国軍同盟領侵攻作戦「ラグナロック」時のフェザーン失陥です。ラインハルトと組んだ帝国駐在官のボルテックの偽装工作(偽情報流布、情報隠蔽)に惑わされ、事前に帝国艦隊のフェザーン進駐を察知できず、地下に潜ることになりました。

 しかし他者を駒にしか思わない男が元補佐官でそれまで役に立ったとはいえ、手元を離れた者を簡単に信用するでしょうか。ケッセンリンクすら疑いの目を向けていたのにです。

 

 ここで二つの想定があります。
 一つは帝国宰相と帝国軍三官を兼任するラインハルトの野心に気がつかないわけがないということを。前例や通念など一蹴する者がこれまで通りの手段を用いるのかと。フェザーンの力では帝国軍の武力に対抗できず、遅かれ早かれフェザーンが奪われるのであれば「強引に奪われた」事実が必要であったのではないでしょうか。
 もう一つは地球教の存在です。その軛から逃れるため帝国軍のフェザーン進駐を利用したのではと考えます。周囲の人員を整理して「暗殺」の手が及ばない隠れ家に入るために。デグビイエス司教をボルテックが勝手に無力化してくれたのが良い誤算で、おかげで明確な背信行為とは見られずに済みました。

 

 フェザーン失陥はベストではなくベターな選択として、ルビンスキーの計算内であったとすれば、その後の行動との整合性がとれます。事実、彼は帝国軍の追及から逃れることができました。

 ルビンスキーの野望が頂点に立つことであれば、ラインハルトの銀河統一後に乗っ取るのが効率的です。ラグナロック完了まで動かなかった理由も成り立ちます。

 地球教がローエングラム体制の明確な敵となったのはキュンメル事件からですが、きっかけは暗殺未遂だけでなくトリューニヒトの密告です。明確に暗殺実行犯だと告げられたため憲兵隊が素早く動けました。暗殺失敗後に帝都支部は壊滅、間髪入れずに地球遠征となりました。
 この密告にはルビンスキーが絡んでいるという想像は、それほど無理がないと考えます。地球教の進出をフェザーンが支援していたのは明白で、各地の支部の設立も関係しているでしょう。つまりルビンスキーは後から帝都に来たトリューニヒトよりも、事情に通じていたのです。

 トリューニヒトに裏切りを促して密告させて、地球教壊滅を帝国の手で行わせる。彼への見返りはルビンスキーからの資金援助。互いに信頼も無く利用し合う関係なので、かえって手を組み続けることができたのでしょう。

 彼の野心が実らなかったのは短期では病気のせいではありますが、長期には武力が無い点にあります。彼が組める相手は潜在的な敵対者ばかりのため、孤軍奮闘となったのが一番だと考えます。

 政治家ではなく陰謀家と思われていたのも、理由かも知れません。同じ嫌われ者トリューニヒトは政治家であったため新銀河帝国でも表舞台で活動できました。ラインハルトの失策とはいえ任官して帝国文官としての地位も得ていました。

 

 最後のフェザーン自治領アドリアンルビンスキー。まだまだ考察の余地がある人物です。

大艦巨砲主義があったというので想像してみました。

 帝国暦400年代・宇宙暦700年代の後半は、1個艦隊1万隻以上の艦艇の機動力を活用して柔軟な運用で勝利することが主流でした。しかし以前には大艦巨砲の時代があったそうです。

 地球の時代の話であれば第一次世界大戦前後がそれにあたります。超弩級戦艦が登場した時代です。では宇宙時代となると残念ながら情報はありません。ロイエンタールが語った「かつてはあったが今ではない」を参考にするともっと昔、100年以上前でタゴン星域会戦よりは以後でしょうか。

 

 人類には巨大なものを作る能力はありました。人工物ならイゼルローン要塞がその代表です。巨砲もありました。代表がイゼルローン要塞の雷神の雷(トールハンマー)です。

 ならば巨艦も製造可能でしょう。ラインハルトやヤンの活躍した時代の戦艦クラスは全長1kmを超えますが、当然これより大きいと考えます。

 1kmクラスを巨艦と言わないのなら2kmか3kmか。5kmもありえます。砲門も直径10mか20mか。宇宙戦艦ヤマト波動砲よりも大きな口径の主砲が搭載された艦から吐き出されるエネルギーで、他を圧倒する光景は見ても見たい気がします。

 全長3.5kmのヴァルハラ級戦艦とか、駆逐艦クラスなら複数搭載できるネプトゥーヌス級ドック型大型母艦、全長10kmの機動要塞を旗艦とした帝国艦隊も壮観でしょう。

 ただこれらの艦は機動力では巡航艦以下のサイズの艦には遅れをとり、もしかすると雲霞のごとく群がる小型艦艇の攻撃に耐えきれず、轟沈する光景があったのかもしれません。

 小型艦艇の集団戦術に対抗するために、巨艦の周囲に小型艦艇を配置するようになったのかもしれません。本末転倒ですが。動きの鈍い中央の巨艦を守るため、護衛艦隊は思うように戦術機動ができず、集中砲火を浴び続けて轟沈していったのかもしれません。

 ならば護衛艦隊を自由に動かして敵の弱点を突けばよいのでは。

 これが帝国軍の軍事ドクトリンを見直す機会になったと考えます。まずは巡航艦以下の艦艇の機動力が評価され、敵艦隊の包囲または突破戦術が重要となる。戦艦も機動力を確保するために小型化され、今の1㎞級が標準となる。

 

 包囲と突破、二つの基本を実行するために巡航艦が主力となり、機動戦を繰り広げるなかで戦術が洗練されていったのがラインハルトとヤンの時代なのでしょうか。

 ブリュンヒルトすら小型に分類される大艦巨砲の時代。時代の徒花となった巨艦達の活躍と没落は、知ることが叶わぬゆえに想像力がかき立てられます。

帝国印絶対零度の剃刀-義眼の軍務尚書の嫌われ方について-

帝国が誇る冷厳鋭利な参謀長のち軍務尚書は作中、味方である提督達から嫌われてました。特に性格が1mmも合わないミッターマイヤーや方向性が真逆のロイエンタールとの不仲は有名ですが、他の提督達も嫌ってます。

 

「犬は犬同士、気が合うのだろ」

「やつは葬儀さえとりしきっていればいい。よく似合うし、誰の迷惑にもならない」

「やつの巻きぞえになるのはごめんこうむる。やつに同行してヴァルハラにいくことになったら、ワルキューレの車から突き落としてやるからな」

フランツ・ヨーゼフ・ビュッテンフェルト提督 家訓で悪口はより大きな声で口にするため

最も多くの発言は帝国の破壊衝動、猪、突撃〇〇のビュッテンフェルト提督です。言いたい放題です。相手がそこに居ても居なくても関係ありません。

 

「暗殺者の役立たずめ、どうせ殺害するのならオーベルシュタイン軍務尚書を吹きとばせば、賞賛してくれる者もいるだろうに」

アウグスト・ザムエル・ワーレン提督 事件の収拾に動く中で、軍務尚書の無事を知り

「あのオーベルシュタインより早く死んでたまるか。俺は奴の葬儀の時に、心にもない弔辞を読んで心で舌を出してやる、それが楽しみで、今日まで戦死せずにきたのだからな」

コールネリア・ルッツ提督 事件により負傷し病院で同僚のワーレン提督の見舞い時の発言

キルヒアイス提督麾下で副司令官として共に戦った二人です。そのため赤毛の提督と軍務尚書への想いは同じくしており、二人の間には多少の友誼があったと思えます。

なお上はある事件に遭遇した一人の内心、下は被害に遭ったもう一人の発言です。会話ではありませんが、奇しくも同じ気持ちであったことが証明されております。

 

「かの辣腕なる軍務宰相閣下が、見えざる手を伸ばして暗殺したとしても、おれは意外には思わぬ」

オスカー・フォン・ロイエンタール提督 相手を評価しながらも皮肉と悪意を持っての発言

互いに理知あるものの自分の流儀を曲げぬ性格で、何よりライハルトに求めるモノが真逆のため、片方はこのような発言をするに至ります。

もう片方も相手に偏見あり、それが微妙な形で立証されたのですが常に沈黙を守るので真実は闇の中となります。

 

「あのオーベルシュタイン」

ウォルフガング・ミッターマイヤー提督 参謀長または軍務尚書の名がでる都度の発言

余人には真似ができない彼の疾風の艦隊指揮と同様に、名をあげるだけの一言で嫌悪の感情を周囲に表現するという芸当です。大人気ないですが。

比較的ミッターマイヤーは内心を記されることが多く、オーベルシュタインに対する感情が読者に対しても露わですが、その逆、オーベルシュタインの感情は実は謎だったりします。

 

オーベルシュタインという人物、作中は嫌われ者ですが武闘派のばかりのローエングラム体制で唯一の理性派として評価するファンはおり、一部のファンは鋭利な眼差しで見据えられたいと思っているとかいないとか。

有能で功績もあり皇帝に対しても諫言するオーベルシュタイン。嫌われる事で体制維持に貢献したとも言われる男は、同時代や後世の、そして読者の好悪すら一顧だにしないのでしょう。