2021-01-01から1年間の記事一覧

銀英伝における艦隊戦の意味について

戦争は外交の一手段という言説を基準にして語るのなら、銀英伝における艦隊戦は最も○○な交渉手段といえます(この○○に入る言葉は色々あるので割愛)。交渉はスポーツの試合のように、できるだけ両陣営が対等になるようにルールを設定したりはしません。だか…

ヨブ・トリューニヒト氏の華麗なる弁舌

銀英伝の中で嫌われキャラといえばハイドリッヒ・ラングと並ぶ二大巨頭ヨブ・トリューニヒト氏。自由惑星同盟の最高評議会議長まで登り詰めた政治家であり、雄弁家または詭弁家で、同盟を銀河帝国に売り渡した史上最大の商人。特に演説は同盟のトップとなる…

ヤン・ウェンリーのトリックは二度使われる。

魔術師ヤン・ウェンリーは生涯で数々のトリックを使いましたが、2度使われている事が多いです。一流は成功した方法にはこだわらず、二流は成功した手を再び用いて、三流は他人の成功を模倣します。ヤンは戦術に関しては一流のはずで、では2度使っているとは…

ラインハルト考案の機動縦深陣が実は深いという話

ラインハルトとヤンが雌雄を決すために全力で戦ったバーミリオン会戦。互いに艦隊司令官として拮抗した戦力で開戦した最初で最後の戦いでした。もちろん帝国軍が優位な戦いではあります。戦術目標はラインハルトが「他の艦隊の到着を待つ」であったのに対し…

ラインハルトの政治的センスについて

ラインハルトは軍事的センスは最初から示されていましたが、政治的センスは皇帝になってから発揮されました。 まずはキュンメル事件で地球教に対して行った処置です。御前会議でラングが更なる調査を求めますが、地球教が何たるかを正確に理解した上で最適な…

艦隊戦が主体だけど艦隊の細かい編成が判らないので推測してみます。

艦艇一万隻以上、要員百万人以上の一個艦隊が戦略単位となる銀英伝の世界ですが、具体的な編成となるとなかなか不明な所があります。 一個艦隊より小さな単位だとアッテンボロー少将が率いる2,200隻の分艦隊とその対戦相手のアイヘンドルフ艦隊は戦艦200~250…

銀英伝の技術的前提条件を整理してみます。

銀英伝の舞台は遠い未来であり、今よりも進んだ科学技術がある前提です。ただ戦乱の世の常か、それらの技術は軍事に最も投入され、その粋を集めたのが宇宙戦艦だったりします。 では具体的に軍事に利用されているものは何かというと、まずはレーダー透過装置…

ヤン・ウェンリーという虚構と誤解

自由惑星同盟の将官で不敗の魔術師として名をはせ、同盟滅亡後は共和制の守護者として戦い続け、最後は反動勢力の暗殺によりその生涯を終えたヤン・ウェンリー。 こうして紹介すると大変優れた人物との印象を受ける彼ですが、虚構を排した人物伝がもし刊行さ…

ワルター・フォン・シェーンコップの紳士的野蛮性について

登場人物の中でも戦場でも後方でも特筆すべき勇者ぶりを発揮したのがワルター・フォン・シェーンコップ氏。 戦場では指揮官としても装甲服をまとった戦士としても一流で、司令部では独特のポジションで毒舌を披露して、後方では相手に困らずの無敵ぶり。一部…

正しい銀河の治め方

この時代にはゴールデンバウム王朝銀河帝国、自由惑星同盟、フェザーン自治領、そしてローエングラム王朝銀河帝国の四つの政体があり、うち三つは最後の一つに滅ぼされました。 ゴールデンバウム王朝は専制国家で貴族という階級が優位な国。自由惑星同盟は惑…

名将メルカッツは堅実で間違いない戦をしますのでお手本にしましょう。

ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ提督はゴールデンバウム朝銀河帝国の末期に、名将として名をはせた人物ですね。適切な艦隊運用と的確な攻撃、臨機応変に戦術を駆使しても定石を崩さずに勝利してます。 アスターテでは第六艦隊への先制攻撃で的確…

イゼルローン要塞攻略について(解決編)

難攻不落の要塞をフライングボールのように敵味方の間を簡単に移動させた男を抜きにすると、イゼルローン要塞は基本難攻不落です。作中、力技では同盟が六回失敗、帝国が一回失敗、成功は同盟が悪知恵で二回、帝国が退去後の奪還二回(一回はイゼルローン共和…

新銀河帝国将帥列伝が某ペテン師の被害者リストになる件について

ヤン・ウェンリーと言えば「魔術師」や「奇跡」の他に「ペテン師」の二つ名を敵からつけられておりました。実際に一人で帝国の提督達を手玉に取りまくった彼のペテンリストは、おそらく共和主義者達の地下文書となって駆け巡っていることでしょう。 簡単に書…

「謀略には謀略を」血で塗られた黒狐の記録

アムリッツアの大敗で帝国と同盟の経済・軍事バランスが崩れた結果、フェザーンの黒狐はフェザーンの真の支配者である地球教徒の大主教に向かって、「戦争による社会不安から宗教を広める」から「統一国家を出現させその中枢を感化させて丸ごと乗っ取る」方…

戦いは始める前に勝利を決定するのが正しい

キルヒアイスと言えば常勝無敗で横死した悲劇の英雄で、欠点も無い完璧人でした。無論、彼の忠誠はラインハルトとアンネローゼだけに向けられており、万人に優しいわけではありませんでした。 そんな彼ですが、あまりにも若くして死んだため、本当に有能だっ…

戦争以外役に立たない男

政治家としても有能なラインハルトとは違い、ヤンは戦争以外は役に立たないのではと言われてます。やんわり「首から上だけ必要」と表現されたりしますが、逆に言えば戦場なら有能過ぎるの男です。 これはムライ参謀長がユリアンがフェザーンに駐在武官として…

味方が苦労しているのに一人だけ手柄をたてると楽していると思われる。

ヤン・ウェンリーは「味方が失敗する中で、少しだけ点を稼いで昇進する」と軍部内の敵対する勢力から言われました。本人は「なるほど、そういう見方もあるか。」と感心していましたが。 確かにエル・ファシルでは艦隊戦の敗北・逃亡から民間人脱出で点を稼ぎ…

暗躍してこそのルビンスキー

アドリアン・ルビンスキーはフェザーン自治領主という地位を利用して政略と戦略を楽しむ策謀家ですが、大き過ぎる野心とたぐいまれなる才能により銀河をかき混ぜました。 自治領主としてフェザーンを統治し、帝国の高等弁務官や同盟の駐在弁務官との駆け引き…

赤毛の親友は前半二割で去ったのに、最後まで登場する苦労人。

キルヒアイスは作品前半でお亡くなりになりましたが、その後も作中で名前が度々出てきます。 同盟遠征時の謀略の一環で大義名分を手に入れるために部下を殺す(自死させる)ことになったラインハルトは、キルヒアイスならこんなことは許さないと考えます。 後…

歴史に名を残し損ねた男

銀英伝には目立ちはしたもののすぐに消え去った者は沢山います。少しだけ登場して後は名前が出ない者や、すぐに戦死してその後の出番は無い者です。 無論、赤毛ののっぽさんのように二巻までの登場で名を残し、その後も作中で名前が記され、登場人物の口にも…

査問会はえてして趣旨が異なってしまう。

第八次イゼルローン攻略戦の間、ヤンはハイネセンで査問会を受けてました。査問会とは「あいつヤバくね。」という相手を取調べるものですからヤンが査問委員から高圧的な態度を取られるのは致し方ないところですが、如何せんフレデリカの記憶通り同盟軍に制…

魔術師兼ペテン師の真骨頂

本人の自己評価とは異なり、軍人としては他者から絶賛のヤン・ウェンリー提督の渾名は魔術師またはペテン師と勇猛果敢が鑑とされる軍人には似つかわしくないものです。でもそれは戦闘において最大限に効果を発揮します。 ・ヤン艦隊の動きがおかしいのはヤン…

要塞対要塞は大艦巨砲主義の極致

第八次イゼルローン要塞攻略戦は帝国側の奪還戦として始まりました。ガイエスブルク要塞を用いての要塞による要塞攻略という手法で、帝国軍は艦隊拠点としてと共に、最大の攻撃力としても活用します。それが要塞砲「ガイエスハーケン」です。イゼルローン要…

なぜ帝国の門閥貴族は金髪の小僧に負けたのか。

一方は軍務と戦場に耐えた者だけで構成された軍隊で、もう一方は下はともかく上は碌な軍歴無くとも個人で軍艦を持てる立場の門閥貴族。戦を知らない奴らが戦を知っている奴らに勝てると考えるのはお花畑の門閥貴族だけです。 まあ話はそれで終わるのですが、…