正しい銀河の治め方

 この時代にはゴールデンバウム王朝銀河帝国、自由惑星同盟フェザーン自治領、そしてローエングラム王朝銀河帝国の四つの政体があり、うち三つは最後の一つに滅ぼされました。

 ゴールデンバウム王朝は専制国家で貴族という階級が優位な国。自由惑星同盟は惑星や星系の連合体で、選挙で選ばれた各星系の議員からなる同盟議会(立法府)とその議員から選出された最高評議会(行政府)で構成されている国家。そしてフェザーンは帝国領内の自治領として一惑星でありながら第三勢力として存在するほぼ独立した国家。

 この三国体制が百年以上続いた後に登場したローエングラム王朝は皇帝が何者にも囚われずに全ての既存勢力を粉砕して誕生したため、最も活力の満ちた国になりました。

 

 ローエングラム王朝の特色として、幹部に既存勢力を背景とした人材が少ないことにあります。ラインハルトが元から既存勢力の粉砕を目標にしていたので、当然といえば当然ですが。国務尚書のマリーンドルフ伯は名門ですが門閥貴族の中では非主流。貴族なのにその証であるフォンの称号を外した民政尚書ブラッケや財務尚書リヒター。軍務尚書オーベルシュタインはフォンの称号を持ってますが、既存勢力との関係が浅くイゼルローン要塞失陥時は責任を取らされそうになりました。

 また同王朝は財政面で門閥貴族の資産やフェザーンの経済を吸収したので、新興国家が陥る資本不足による財政難から無縁でした。この財政面での新王朝の余裕が、逆にいかにそれまで不公平な体制であったかと証明してます。もっとも自由惑星同盟を併呑して銀河(人類の版図)を手に入れた後の統治コストがどうなるか。特に敵対勢力の居なくなった軍を縮小できるかがポイントになるでしょう。

 もし黒狐がもっと長生きしていれば、このあたりで暗躍できたでしょうが。

 

 このようにラインハルトにとって有利な条件(スタートは問題だらけ)で政権を手に入れましたが、もしラインハルトとヤンが逆の生まれだったらどうでしょう。

 どう考えてもラインハルトが合法的な選挙か非合法のクーデターで同盟を手に入れる未来図しかありません。あとヤンは帝国の単なる小役人で終わる可能性が大です。

 

 もう一つの可能性なら、「ラインハルトとヤンがフェザーンに生れ、学校で出会った二人がコンビを組み銀河を手に入れる」ですね。ラグラン・グループのパルムグレンをラインハルトが、チャオをヤンが受けもってフェザーンを手に入れる。その後にフランクールとタウンゼントは二人がそれぞれ適宜担当して、新銀河連邦を建設することでしょう。 

 最終章はさっさと引退して年金もらいながら故郷で歴史教師になったヤンのもとに、憲兵隊が現れるところでしょうか。その前にラインハルトが早死にしている条件ですが。

 何れにせよ歴史は繰り返す、で最後締められて物語が終わりそうです。