「銀英伝」で勢力「地球教団」を選択した場合の勝ち方について

 もし架空ゲーム『銀河英雄伝説 -銀河の歴史がまた1ページ-』で勢力「地球教団」が選べたとしても、最初から選ぶのは弱小勢力好きか単なる捻くれ者でしょう。

 もちろんフェザーンを従えるため経済力はあり、布教とテロで勢力を伸ばすことが可能なため力は中々侮れないです。しかし正史の開始時はフェザーン自治領主があのルビンスキーのため、いつ離反するか判らないという状態で万全とはいえません。いきなり帝国に攻められることはないにしても帝国が順調に世代交代して新王朝誕生となれば、軍務尚書となったあのオーベルシュタインの権限が強化され、暗殺未遂事件がなくとも地球教に圧力が加えられるシナリオに進む可能盛大です。

 こう考えると地球教団の勝利条件は作中にあるとおり、裏に隠れてフェザーンを操り、帝国同盟双方が疲弊しきった状態で表舞台に現れて神政一致の政体で銀河統一するしかないです。

 本編でも同盟で信者を増やし政治勢力と結託できた時点では、フェザーンと同盟を裏で操れているのですから後は帝国だけとなり、そろそろ表舞台に出れるか?となったのも頷けます。しかしルビンスキー発案の「帝国に銀河を統一させてその政体を乗っ取る案」に修正を迫られたのが運のつきです。

 金髪の孺子を侮った点もありますが、陰謀を常日頃から張り巡らすあまり相手も同様に陰謀を巡らせることを見落としていました。

 皇帝誘拐に始まる一連の軍事作戦で、ルビンスキーですら帝国軍がイゼルローン回廊で疲弊する前提で計画を考えておりました。むろんそんな愚行をラインハルトが選ぶことなくフェザーン回廊を早々に占領します。ルビンスキーの思惑は外れ、帝国軍は圧倒的兵力で同盟に侵攻します。このとき最後まで帝国軍を阻んだのがヤンであり、地球教もルビンスキーも能動的には動けませんでした。

 ミッターマイヤーとロイエンタールがハイネセンを攻略した時に、トリューニヒトが早々に降伏するのを手伝ったのは地球教徒で、ラインハルトを唯一敗北または戦死させる機会を逸しました。

 キュンメル男爵を利用してラインハルトの暗殺は一年以上前からの仕込みであり、ほぼ統一が決まった時点での皇帝の排除は当初の計画のうちでしたが、失敗したうえにトリューニヒトの裏切りにより首謀者として表舞台に立ってしまいます。結果は帝国軍による地球制圧となり本拠地を失います。このあたりは最高幹部の一人ド・ヴィリエあたりがトリューニヒトを見誤ったというべきでしょうか。

 またヤンを暗殺することは成功したものの、ラインハルトの最大の敵を排除してローエングラム王朝を磐石にしたのは大失策です。この後に地球教団はラインハルト暗殺を何度か実行しますが全て失敗、最終的に壊滅します。

 一番の問題は影に隠れてこその力であった者が、表に出てきたことで単なる敵の一つに成り下がった点です。

 そんなわけで話を戻すと、勢力「地球教団」は布教して信徒を増やし勢力を拡大する表の活動と、要人を暗殺したり社会不安を煽るテロなどの裏の活動、この両方をバランスよく使いの人類支配を目指す組織運営が必要になる。なおテロについては失敗すればリアクション(支部の制圧や幹部の逮捕)があるので毎回賭けになります。

 結局は地道な努力が必要という身も蓋もない話ですが、これを数百年に渡って継続してきたからこそ地球教団は帝国を脅かす存在になれたという事実。やっぱり帝国と同盟の共倒れからの宗教による救済を名目として一気に拡大の当初のシナリオがよかったのではないでしょうか。